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交通量のデータから見る大雨の影響

2026年8月から9月にかけて、千葉、北陸、東海で災害級の大雨が相次ぎ、各地で大きな爪痕を残しました。被害を伝える報道では、急激な降雨による河川の氾濫や浸水、特に道路の冠水や自動車の水没の被害の様子が目立ちました。そこで、大雨の情報と実際の雨量、その前後の交通量から、ドライバーの心理や行動の変化を読み取ることができるのではないかと考えました。あわせて、データの収集と分析の過程も紹介します。

災害級の3つの大雨を比較する

対象にしたのは、次の3つの大雨です。降水量は気象庁「過去の気象データ検索」の時別値、発表時刻は各地方気象台の気象速報と気象庁・国土交通省の報道発表によります。

  • 千葉(8月13日):千葉観測所の日降水量351.0mm、19時までの1時間に107.5mm。13日19時30分から翌14日5時15分まで、千葉県に大雨特別警報
  • 北陸(8月27日):富山147.5mm、金沢95.5mm。石川・富山に27日6時20分から16時20分まで大雨特別警報
  • 東海(9月8日):名古屋219.5mm、17時までの1時間に97.5mm。18時20分に庄内川へ氾濫特別警報

交通量には、xROAD(国土交通省道路局)の交通量 API が公開する直轄国道の常時観測点、全国約990地点の5分値を使いました。各地点の1時間の台数を、大雨のなかった9月1〜4日の平日(土日は9月5・6日。以下「平常週」)の同じ時刻と比べ、対象地域内の合計の比を求めています。1.0なら平常どおり、0.5なら半分です。

雨のピークと交通量の変化は三者三様

千葉県のデータ解析

千葉(県内7地点)は、19時台に0.47まで下がりました(図1)。前日の同じ時刻は0.82、翌日は0.72です。下がったのは1時間降水量107.5mmを記録した直後、大雨特別警報が発表された19時30分を含む1時間で、翌日には回復に向かっています。急激な低下と翌日の回復、という経過です。

図1: 千葉豪雨(2026年8月12〜14日)。千葉県内7地点の交通量を平常週の同じ時刻と比べた比(太線)。細線は対象地域外の全国、破線は1.0。棒は千葉の時間降水量(右軸、mm/h)。赤い破線と番号は下の表の防災気象情報に対応。●はピーク日の最小と最大で、最小0.47(8月13日19時台)、最大1.06(8月13日0時台)。
図1: 千葉豪雨(2026年8月12〜14日)。千葉県内7地点の交通量を平常週の同じ時刻と比べた比(太線)。細線は対象地域外の全国、破線は1.0。棒は千葉の時間降水量(右軸、mm/h)。赤い破線と番号は下の表の防災気象情報に対応。●はピーク日の最小と最大で、最小0.47(8月13日19時台)、最大1.06(8月13日0時台)。

表1: 千葉豪雨の期間に気象庁等が発表した防災気象情報(一次資料で照合済み)

No.発表時刻内容
18月13日 17時28分記録的短時間大雨情報 第1号(柏市付近 約110mm/h。計25回)
28月13日 17時58分線状降水帯発生情報 第1号
38月13日 19時30分レベル5大雨特別警報 発表(以後拡大、計19市3町)
48月13日 20時58分線状降水帯発生情報 第2号
58月13日 21時55分レベル5土砂災害特別警報 発表(千葉市・勝浦市。計6市)
68月14日 1時17分記録的短時間大雨情報 第25号(最終)
78月14日 2時08分線状降水帯発生情報 第3号
88月14日 5時15分特別警報を警報に切替

北陸地方のデータ解析

北陸(石川・富山・福井の58地点)は異なる経過をたどりました(図2)。前日26日は終日0.96〜1.10で平常でした。27日は未明に線状降水帯発生情報(2時58分、富山県西部)、6時20分に大雨特別警報が出たあと、朝7時以降に徐々に下がり、降雨が終わった夜の21時台に最も低い0.67を記録しました。翌28日は日中に1.0を超えて回復します。降雨中ではなく、降雨が終わったあとに下限に達する、一日を通じて緩やかに減少した経過でした。

図2: 北陸大雨(2026年8月26〜28日)。石川・富山・福井の58地点の交通量を平常週の同じ時刻と比べた比(太線)。細線は対象地域外の全国、破線は1.0。棒は金沢(濃)と富山(淡)の時間降水量(右軸、mm/h)。赤い破線と番号は下の表の防災気象情報に対応。●はピーク日の最小と最大で、最小0.67(8月27日21時台)、最大1.34(8月27日2時台)。
図2: 北陸大雨(2026年8月26〜28日)。石川・富山・福井の58地点の交通量を平常週の同じ時刻と比べた比(太線)。細線は対象地域外の全国、破線は1.0。棒は金沢(濃)と富山(淡)の時間降水量(右軸、mm/h)。赤い破線と番号は下の表の防災気象情報に対応。●はピーク日の最小と最大で、最小0.67(8月27日21時台)、最大1.34(8月27日2時台)。

表2: 北陸大雨の期間に気象庁等が発表した防災気象情報(一次資料で照合済み)

No.発表時刻内容
18月26日 21時05分レベル2大雨注意報(富山県・最初の発表)
28月27日 2時58分線状降水帯発生情報 第1号(富山県西部)
38月27日 3時08分線状降水帯発生情報 第1号(石川県 加賀・能登)
48月27日 5時33分記録的短時間大雨情報 第1号(石川県羽咋市付近)
58月27日 6時08分線状降水帯発生情報 第2号(富山県西部)
68月27日 6時19分線状降水帯発生情報 第2号(石川県能登)
78月27日 6時20分レベル5大雨特別警報 発表(羽咋市ほか3町・氷見市)
88月27日 8時48分線状降水帯発生情報 第3号(石川県加賀)
98月27日 16時20分特別警報を警報に切替

東海地方のデータ解析

東海(愛知・岐阜の45地点)はさらに異なります(図3)。線状降水帯発生情報(16時28分、岐阜県美濃地方)が出て名古屋で1時間に97.5mmが降った16時台でも0.94、庄内川に氾濫特別警報が出た18時台の0.89が下限で、低下は小さいものでした。ところが夜になって増加に転じ、23時台に1.20に達します。同じ時刻の全国(対象地域外)は0.84でした。翌9日は午後から夜にかけて0.8台が続いています。小さな低下と夜間の増加、そして翌日まで続く影響です。

図3: 東海大雨(2026年9月7〜9日)。愛知・岐阜の45地点の交通量を平常週の同じ時刻と比べた比(太線)。細線は対象地域外の全国、破線は1.0。棒は名古屋(濃)と岐阜(淡)の時間降水量(右軸、mm/h)。赤い破線と番号は下の表の防災気象情報に対応。●はピーク日の最小と最大で、最小0.89(9月8日18時台)、最大1.20(9月8日23時台)。
図3: 東海大雨(2026年9月7〜9日)。愛知・岐阜の45地点の交通量を平常週の同じ時刻と比べた比(太線)。細線は対象地域外の全国、破線は1.0。棒は名古屋(濃)と岐阜(淡)の時間降水量(右軸、mm/h)。赤い破線と番号は下の表の防災気象情報に対応。●はピーク日の最小と最大で、最小0.89(9月8日18時台)、最大1.20(9月8日23時台)。

表3: 東海大雨の期間に気象庁等が発表した防災気象情報(一次資料で照合済み)

No.発表時刻内容
19月8日 4時07分線状降水帯半日前予測(岐阜県 第1号)
29月8日 15時48分線状降水帯直前予測(岐阜県美濃地方)
39月8日 16時28分線状降水帯発生情報 第1号(岐阜県美濃。愛知も夕方に発生)
49月8日 16時40分記録的短時間大雨情報 第1号(岐阜県美濃。愛知は16〜18時に5回)
59月8日 18時00分庄内川 レベル4氾濫危険警報
69月8日 18時20分庄内川 レベル5氾濫特別警報 発表
79月9日 0時40分庄内川 氾濫注意報に切替(警報解除)

同じ「大雨」でも、道路交通量の変化の仕方はこれだけ異なります。ここまでが、データから解釈できたことです。

結果の考察と限界

解釈できたことと同じくらい、解釈できなかったことを記録しておくことが重要だと考えています。今回、いったん立てて取り下げた解釈が2つあります。

1つ目は欠測の解釈です。千葉の8月13日、23時45分と50分の2つの時刻で、千葉の全地点が同時に欠測になっていました。当初は「豪雨でセンサーが停止した」と解釈しました。しかし全国のデータを見ると、同じ2つの時刻は全国一斉に欠測していました。千葉に固有の現象ではなく、システム側の欠測です。この解釈は取り下げました。

2つ目は北陸の未明の急増です。27日の2〜3時台に、対象地域の交通量が平常の1.3倍に急増しました。国道8号沿線の数地点に集中した、大型車が多く一方向に偏った短時間の急増です。当初は「高速道路の通行止めで物流が国道へ迂回した」と解釈しましたが、報道されている通行止めの開始はいずれも午前中で、未明の急増を説明できません。時刻は富山県西部に線状降水帯発生情報が出た2時58分と重なりますが、それが原因かどうかも分かりません。センサーの過計数なのか、実際の車列なのか、現時点では判断できないため、原因未特定として記録しています。

そのうえで、この分析には次の限界があります。

  • お盆期間の影響:千葉の都市部の観測点はお盆で元々交通量が少なく(前日も0.8台)、逆に全国は帰省で平常より多くなっています。9月の平常週との比の絶対値ではなく、同じお盆週の前日との差で解釈する必要があります
  • 基準期間の短さ:基準にした平常週は1週間だけです。月曜未明のように曜日固有の減少が「変化」に見えることがあります(東海の9月7日3時台の0.78はこれで、大雨の影響ではありません)
  • 降水量の代表性:降水量は気象台の一地点の値で、面としての雨を代表しません
  • 減少の要因:交通量の減少が「車が通らなかった」のか「渋滞で流量が下がった」のかは、通過台数だけでは区別できません

最後の点は、同じ道路データプラットフォームが公開している ETC2.0プローブ由来の平均旅行速度(道路区間ごと・日別15分単位)を重ね、台数が減って速度が平常時と同じなら交通量そのものが少なく、速度も低下していれば渋滞、と判別できます。ただしこの確定値は事象から約2ヶ月半遅れて公開されるため、8月の雨の分が公開される11月に改めて確認する予定です。

冒頭の問いに戻ります。大雨特別警報と同じ時間帯に交通量が半減した千葉の経過は、ドライバーが外出を控えた可能性を示唆します。北陸で降雨が終わったあとに交通量が下限に達したことや、東海で夜間に増加したことも、行動の変化を反映している可能性があります。ただし、本稿のデータから言えるのは通過台数の変化までです。その変化が、外出を控えた結果なのか、通行止めや冠水による物理的な制約なのか、渋滞なのかは区別できず、心理そのものも観測できません。この先は、道路管理や気象の専門家との検討や、旅行速度などの追加データによって初めて解釈できる部分です。

データ収集から解析までの手順

こうした解釈——採用したものも取り下げたものも——をあとから誰でも検証できるように、UMT は次の3つを行いました。

  • データ台帳をつくる:使ったファイルのすべてについて、提供機関、取得 URL、取得日時、取得方法、スクリプトの版(ハッシュ値)、利用条件、既知の限界を一つの台帳に記録します。どの図がどのコードのどの版から生成されたかを追跡できます
  • 再現手順を残す:一次データから図までを、コマンド一つで再生成できるスクリプトとして残します。図の裏にある CSV も、そのまま提供できる形で保存します
  • 保持期限内に取得する:xROAD の5分値は API 上で約1ヶ月しか遡れないため、事象が起きたら期限内に全国分を取得する運用を決めました。千葉の「前日」8月12日は、保持期限が切れる前日に取得しています

分析結果を公開する前に、分かったことを検証できる形で残す——記録がなければ、解釈は検証できません。これが UMT のデータ可視化における基本方針です。

行政や研究のデータで「分かったこと」を説明できる形にしたい方は、UMT にご相談ください

本記事の続編や分析の経過はUMTのSNSで発信する予定です。ご興味のある方はぜひフォローをお願いします。XInstagram

※ 交通量は「交通量データの提供(オープンデータ)」(公益財団法人日本道路交通情報センター)を加工して作成しています。参考値であり、国土交通省が内容を保証するものではありません。降水量は気象庁「過去の気象データ検索」、防災気象情報の発表時刻は各地方気象台の気象速報および気象庁・国土交通省の報道発表によります。

出典

防災気象情報の資料はいずれも 2026-09-17 取得。北陸の通行止め開始時刻の報道は 2026-09-13 閲覧。

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  • Teamumt
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